【食べ物が腐らない理由】微生物と水分量・燻製・pH値

食品によって、保存料(食品添加物)が無くても腐りにくいものがあります。

健康的な食事を意識する現代人にとって、大量の添加物が入った食品はあまり口にしたくないと考える人も多いでしょう。

「腐る」の原理を知っていれば、ご家庭でも安全に保存食を作れるようになります。

自由水と細菌

微生物が増える大きな原因は「水」です!

その理由について解説していきます。

昔はいちごなどのフルーツを収穫しては、甘いジャムを作っていました。

ジャムは保存食として、長期保存ができます。

では、なぜジャムを腐らないのでしょうか?

食べ物を腐らせるカビや細菌などの微生物は、がないと増えることができません。

食べ物の中にある水は、「結合水」と「自由水」の2種類に分かれ、「結合水」とは食べ物の成分(炭水化物・タンパク質など)と結合するので、微生物が増えるために利用することができません。

しかし「自由水」は微生物が増えるために利用ができます。

微生物が増えるために必要な「自由水」の量は、カビ・細菌などの種類により異なりますが、食べ物の中にある「自由水」の量が少ないほど腐りにくくなります。

出典:(株)パルエース

自由水を減らすには?

食べものの中にある「自由水」を減らすには、食べものを乾燥させることが最も効果的です。

食品を乾燥させ、ドライフルーツや干物などに加工することで、食品中の「自由水」を減らすことができます。

また、乾燥以外の方法もあります。

食べものに砂糖を加えて、「結合水」の割合を増やすことも効果的です。

砂糖の防腐性を生かした食べものは、フルーツや野菜の砂糖漬け、ジャム、練りようかんなどです。

「自由水」を減らす方法には、以下のようなものがあります。

  • 砂糖を使う
  • 干す
  • 塩を使う
  • 煙でいぶす
  • 凍らせて乾燥させる

詳しく

◉食品中の自由水の割合

出典:料理大国

お酒が腐らない理由

お酒は10%を超すアルコールを含んでいるため、ほとんどの細菌は活動ができません。

しかし、一部の細菌(火落菌ひおちきん)は、強いアルコールの中でも活動し、お酒を白濁させることがあります。

お酢が腐らない理由

お酢には「酢酸」という成分が含まれており、強い殺菌作用があるため、腐敗することはほとんどありません。

しかし、時間の経過とともに味の劣化は起こるため、賞味期限が設けられています。

燻煙・殺菌

煙を肉や魚にかけると、腐敗させる菌を減らしたり、殺したりする効果があります。

その成分はフェノール系化合物アルデヒドで、木材の主要3成分のセルロースヘミセルロースリグニンが熱分解してできます。

燻煙の防腐効果はもう一つあり、煙と食品が反応してできる「樹脂膜」も、外部からの雑菌の侵入を防ぎます。

微生物の発育・pH値

酸性やアルカリ性を数値化しているのが、pH値です。

pH値が7で中性となり、これより数字が小さければ酸性で、大きければアルカリ性となります。

pH値をコントロールすることにより、ある程度の微生物の増殖を防ぐことができます。

多くの細菌は中性~アルカリ性で増殖し、pH値が4.0~5.0以下になるとほとんどの微生物が増殖できなくなりますが、「乳酸菌」・「酵母」・「カビ」は酸に強い微生物です。

カビはpH2.0~3.0付近まで増殖するので、酸性食品の腐敗の原因菌となります。

◉微生物の発育pH値

出典:木本技術士事務所

◉身の回りのpH値

添加物の保存料とは?

保存料とは食品添加物の一つですが、食品の保存の目的で使用されるものです。

保存料のほかに、調味料・着色料・酸化防止剤などの添加物があります。

保存料は食品中の微生物の増殖を抑える役割があります。

もし、微生物が増殖した場合は、食品の腐敗の原因となり、中には食中毒の原因となるものもあります。

保存料には、殺菌効果はありませんが、微生物を増えにくくする効果があります。

代表的な保存料には、以下のようなものがあります。

ソルビン酸とその塩類

安全性が高く、国内でも古くから保存料として使用されてきました。

バラ科であるナナカマドの未成熟果汁中に含まれています。

安息香酸とその塩類

1875年に細菌の発育や増殖を抑制する作用があることが認められ、国内でも古くから保存料として使用されています。

プロピオン酸とその塩類

カビ類に効果を示しますが、酵母には効果を示しにくいため、パンや洋菓子に使用されています。

ナイシン

乳酸菌が作る抗菌ペプチドで、食肉製品、チーズ、ホイップクリーム等に使用されています。

保存食の本

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作り置き・保存食のおすすめレシピ本です。

食品の腐敗の仕組みが分かれば、安全な保存食を作ることができるようになります。

こちらの本はとても人気で、本を買った人の感想は美味しかったと、絶賛の声が多く書かれていました。

≪参考文献≫
 なぜジャムは長持ち?:(株)パルエース
 食品衛生関連:木本技術士事務所
 保存料とは?:大阪健康安全基盤研究所
 自由水を減らす:料理大国